[読書]学校での「哲学対話」に関心を持つ全ての人へ

すこし前に、土屋 陽介さんの単著『僕らの世界を作りかえる 哲学の授業』(青春新書)をご恵投いただきました。
いやはや、哲学対話が気になる、特に学校で哲学対話をやってみたいという人には、迷わずおススメできる一冊でした!

土屋さんの持ち味は、日々学校のなかに「常駐」する「哲学者」であること。
教諭だけど先生っぽくない、哲学者だけど学者っぽくない、「フィロソファー・イン・レジデンス」(p.23)という立ち位置だからこそ書けることがたくさん詰まっています。

哲学対話とおしゃべりはどう違うのか、哲学対話で大切にすべきことは何か、どうやって始めるのか、どんな効き目があるのか……机上の空論ではなく、土屋さん自身の経験や感じ方・捉え方から具体的に語られます。
その中でも最も共感したのは、哲学対話の時間が「学校の中にありながらも、その時間だけは学校的な秩序が相対化された『アジール(聖域、避難所)』となる」(p.151)という一節です。哲学対話をしていると、学校における立場や関係から離れて、パラドキシカルな表現ですが「無心」に思考している瞬間があります。学校におけるそういう時間は、単純に、心地よいものです。

ところでこの本のタイトルにある「僕らの世界を作りかえる」というフレーズ、これはそのまま土屋さん自身の生き方に当てはまるのではと感じました。

学校のなかに哲学者が常駐する──この全く新しい立ち位置は、与えられたものでも獲得したものでもなく、土屋さんやその周りの人たちが「作った」ものに他なりません。当該私立学校の戦略や懐の深さももちろんありますが、他ならぬ土屋さんだからこその立ち位置だと思うのです。僕はいつも既存の枠の中でちょこちょこ動き回っているだけなので、自分自身で世界を作りかえ続ける土屋さんは、ひとりの人間として、すごいなぁと思うし、なにより説得力が違います。

僕が哲学対話なるワードに惹かれて、神保町のカフェで土屋さんにお会いしたのが2011年頃でした。当時「哲学対話」を学校でやろうという話をしている人は、土屋さんの界隈に数えるほどしかいませんでした。
しかし、いまや年間を通じて学校をあげてやっているところも出てきました。土屋さんはじめ、多くの方々の努力で、世界は作りかえられているわけです。
僕は自分の授業のなかに一部取り入れたり、放課後に対話をしたりしたことしかありませんし、今後もそういう付き合い方をしていくと思いますが、またやろうというときには、まずこの本を読み返すと思います。

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