「作者の意図」?「読み手の自由」?

国語の授業でのダブルスタンダード

教室で小説を読んでいるときに、生徒からときたま出てくる言葉に「先生、そんなことまで作者は考えてませんって。意味ないですよ」というのがある。ところが、同じ子が、別の場面では「小説の読みなんて読者の自由じゃないですか~」と言ったりもする。

これはもう完全にダブルスタンダードなのだけど、生徒の気持ちもまぁわかる。作者の意図を想像してそれに寄り添いたいときもあれば自由に読みたいときもある。それが読書の自由なのだ!

しかし、そうは言っても、なんだかこの「とりあえずその場の気持ちに任せて言っておけ~」という感じをなんとかしたいのも事実。

作品やそこにある表現を読むということはもっと豊かな行為のはずで、ある種の「思考停止」状態に陥り、その豊かさを味わう可能性が狭められてしまうのはもったいない

こんなとき、高校の国語教師だったら「作者の死」だ、「ロラン・バルト」だ、「テクスト論」だ……と話を展開できるかもしれない。でも小学生や中学生にそんなことをくどくど述べ立てても、まず理解されないのではないかと思う。事実、僕も、とっさの切り返しができず中学生相手にゴニョゴニョごまかして授業を進めたことがある。

演劇体験は、こんな国語教師のピンチを救ってくれるかもしれない

「科白が浮かばない!」──インプロでの感動的体験

あるインプロ(即興劇)のワークショップでのこと。

2人組になって、僕はしばらく相手と即興で会話を続ける演技をしていた。ところが、アイデアがなかなか浮かばず会話が続かなくなってしまって、僕はつい「難しいなぁ」とつぶやいてしまった。他の参加者に観られているのに科白が思い浮かばない──この状況に対して、僕は演じることも忘れて「難しい」と言ってしまったのだ。

うーん、インプロって難しい……と焦っていたら、ファシリテーターの方が見かねたのか、行き詰まった僕たちを題材にして、観客側の参加者に「どんなことを感じたか、考えたか?」と訊ねた。

すると、参加者に「さっきの『難しいなぁ』という科白に2人の関係と人物の苦悩が出ていた」というコメントをしてくれる人がいたのだ。僕は「観ている人はそんなふうに受け取るんだ」とえらく感動してしまった。

この体験から言えることはこうだ──即興でとっさに出てきた一言や、あるいは意図しない間や沈黙が、観ている側にはある意味やメッセージを持つことがある。あるいは、発信側の意図と異なる意図で相手役にとられたり、観客に受け取られたりすることもある

演劇、特にインプロを応用的に取り入れた授業は、こうした発信側と受信側の双方が、同じ場を共有するという体験を可能にするのだ。

即興劇の国語教育への応用可能性

このことは、国語教育にどのような意味を持つだろうか。

たとえば、文学作品を読む場合を考えてみよう。作品を我々読者が読む場合、ごく単純化して考えれば、次の3通りのケースがありうる。

  1. 作者の意図通りに読者が受け取る場合
  2. 作者と異なる意図で読者が受け取る場合
  3. そもそも作者が何も意図していないのに読者が解釈したり深読みしたりする場合

作品を実際に読んでいるなかで、これらのうち何が起きているかは作者に訊いてみない限りわからない。もちろん、書いた作者自身にもわからないかもしれない。僕らはそういうなかで作品を自分なりの方法で「解釈」しているのだ。

ところが、インプロを応用的に取り入れた授業では、発信側と受信側が同じ時空間を共有した上で、「解釈する/される」という行為や関係性を同時に体験することができる

こういう体験を経たら、「深読みだ。作者はそんなことは考えていない」という言葉も、「作者がどう考えているかなんて関係ない。読者の自由に読んでいいはずだ」という言葉も、「解釈」という行為を前に、同程度に生産的でないことが了解されるのではないだろうか。

バナナマンのコント『絵本』

ところで、このテーマを考えるといつも思い出すのが、バナナマンの『絵本』というコント。

「作者の意図」とか「読み手の自由」とか、いろいろ考えさせられるコントで、いつか授業で扱ってみたい動画だ。「バナナマンすげぇ」となること間違いなしである。

著作権の関係もあるから転載はできないけれども、観るのに15分もかからないので、国語教育界隈の方は、ぜひ一度観ていただければと思う。(YouTubeで観られます!)

2 件のコメント

  • バナナマンのコントは未見でしたので、楽しく拝見しました。
    確かに、どう受け止めるか、演劇体験から経験的に学べることってありますね。

    • 筑田さん、コメントありがとうございます!
      行為そのものの「経験による学習」を経てから言語の学習に入ると効果的なのではないかなぁと考えたりしています。

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